Story
「歩くまち・京都」と四条通の変身
京都市では、「人が主役の魅力あるまちづくり」を推進し、人と公共交通優先 の「歩くまち・京都」の実現を目指すため、2010年に「歩くまち・京都」総合交通戦略を策定しました。
この取り組みの中でも、京都のまちにとりわけ大きな変化をもたらしたものが、 京都有数の繁華街、四条通の歩道拡幅事業です。2015年に完成したこの事業によって歩きやすくなった四条通の姿は、これまでの「車」中心の社会から、「歩く」ことを中心としたまちと暮らしへの転換を、強く印象付けるものとなりました。
取り残された地下空間
1963年に開通した四条通地下道は、四条通の中心である烏丸通から木屋町通まで の約1,100mをつなぐ、歩行者のための空間です。これまで京都市民は、混雑する地上を避け目的地へと効率的に通り抜けるための補助的な通路として、この地下道を利用してきました。
四条通の地上部分は大きく変化した一方で、地下道は「ただ通り抜けるだけ」の空間として取り残され、四条通の真下にありながら、そのポテンシャルを活かしきれていないのが現状です。
この状況を改善し、地下道を「通り抜けるだけ」の空間から「目的地」となり得るような魅力のある空間に転換させたい。そんな思いで京都市・地元商店街・阪急電鉄が連携して取り組んでいるのが「四条通地下道活性化事業」です。
京都のまちにふさわしい地下道へ
四条通地下道活性化事業は、四条通地下道において京都のまちにふさわしい文化的事業を展開することによって、無機質な空間から賑わいのある空間への転換を目指す事業です。
平成30年度からは、四条通地下道のうち、堺町通から御幸町通の間の300mほどの空間を「文化的活用エリア」として、壁面や柱を利用した展示物の掲示などを行なってきました。
明治150年記念・みんなの写真展〜四条地下道タイムトンネル〜(2018年)、祇園祭創始1150年記念「市民公募写真展」(2019年)、コロナと戦う人々の肖像写真展「マスク時代の肖像」(2020年)等々。こういった写真展やパネル展は一定の評価を得てきましたが、散発的な開催にとどまっているのが現状です。
今回の実証実験では、単発のイベント実施でなく、継続的な地下道の活用による、テーマ性や場所としてのブランディングに踏み込んだ取り組みを進めたいと考えています。映像や音楽、新技術を使ったアート展示など、楽しく柔軟なアイデアを取り入れ、通り抜けるだけの空間から、いつでも気持ちよく、安全に楽しく歩ける空間になることを希望します。
地下道活用の利点と課題
通常、道路等の公共の場に展示をするためには、関係各所への使用許可申請が必要なので、イベントを実施する際には事前の準備と調整が大変です。しかし、四条通地下道での展示の場合、関係各所との協議、調整は京都市が行いますので、通常よりも少ない労力、コストでの事業実施が可能になります。
もちろん、公共の通路という性質上、一定の配慮は必要になりますし、歩行者の安全確保は最優先にしなければなりません。 また、もともと歩行空間として設計されている四条通地下道は、使用するにあたってさまざまな使用上の制約があります(※下表 「事業実施にあたっての留意点、制約等」参照)。
地下道を従来の用途を超えて魅力的な空間へと転換していくためには、現状を検証しながら、時間をかけて環境や仕組みを整えていかなければなりません。
今回の実証実験では、四条通地下道をアート空間として捉え、全体のディレクションやブランディングを行っていただける方、事業を通して今後のさらなる賑わいの創出に向けて環境や仕組みを整えるための課題の抽出を共に行っていただける方の参加を期待します。
四条通地下道をより多くの人に積極的に利用していただけるように、市民が歩きやすく、歩きたいと思える空間づくりができるご提案をお待ちしております。