区役所・支所における自動音声応答(IVR)電話サービスの試験導入
- 募集課題
- 行政情報取得の利便性向上と業務効率化(スマート区役所の推進)
- 担当課
- 京都市文化市民局地域自治推進室スマート区役所推進担当
- 採用企業等
- 株式会社グラファー

京都市文化市民局地域自治推進室では、24時間365日多様なチャネルで、分かりやすく行政情報が取得可能な未来を目指しています。
京都市では、ホームページ、公式SNS、市民しんぶんなど、多様なチャネルで情報発信を行っていますが、ホームページに掲載している情報量は多く、市民の皆様が必要なときに必要な情報を探す場合でも時間がかかってしまいます。また、電話で問い合わせる場合でも担当に取り次がれるまで何度も同じ内容を説明いただく場合があり、応対する職員ともども負担が生じているのが現状です。
これらについてホームページを適切に案内することで解決するものが一定含まれていると考えました。
そこで、「行政情報取得の利便性向上と業務効率化(スマート区役所の推進)」を解決したい課題に設定し、民間企業から技術やアイデアを募集したところ、株式会社グラファー(所在地:東京都渋谷区、代表取締役:石井 大地)から次の提案があり、解決策としての実効性を検証するため、まずは実証実験として共にプロジェクトに取り組みました。
プロジェクトの概要
課題 | 市民が情報を必要とする際にその情報が掲載されたページを探すことが困難。電話の場合も、担当者へ取り次がれるまで待たされるほか、何度も同じ説明をする必要がある。 |
解決策 | 市民の皆様が24時間365日SMSで必要な情報が掲載されたページのURLを受信できるほか、音声ガイダンスに沿って操作するだけで目的の窓口へ自動で電話がつながる自動音声応答(IVR)電話サービスの導入 |
実績 | 一部の区役所の代表電話等で実施。IVR電話サービスで受け付けた電話のうち約7割がSMSの送信又は目的の窓口への自動転送で対応を完結
・ 約36%がSMS送信による情報提供等で問い合わせ対応を完結 ・ 約33%が電話交換手を介さず目的の窓口へ自動転送 ・ 残る約31%が従前のとおり電話交換手が受電 (R6.11.1〜R7.1.31の実績) |
プロジェクトのタイムライン
企業が提供した技術やアイデア
【技術】
- 自動音声応答(IVR)電話サービスの構築および導入
【ノウハウ】
- 他自治体での運用実績に基づく具体的な事例の共有
- IVRの特性を理解した、効果的なシナリオ設計の考え方
- 市民満足度を損なわない、分かりやすいシナリオ表現の工夫
- IVRの利用を促進するための広報施策
- 利用開始後の分析データ
【リソース】
- 業務設計およびプロジェクト推進
- キックオフミーティングの実施およびプロジェクト全体の進行管理
- 課題や業務内容に関するヒアリングの実施
- 専用管理画面へのシナリオ登録や、年末年始に伴う修正作業
- 音声テストの実施と品質確認
- IVR利用データの集計および分析業務の遂行
- 月次報告会用資料の作成および結果報告
- 必要に応じた会議の実施および移動対応

京都市が提供したサポート
- 以下の電話番号で試行導入
- 左京区役所、右京区役所、伏見区役所の代表電話
- 上京区役所、左京区役所、南区役所、西京区役所、伏見区役所醍醐支所の保険年金課
- 文化市民局地域自治推進室市民窓口企画担当
- 事業者にとって実績のない新たな実験フィールドとVOC(顧客の声)の提供
- 試行導入のための各区役所等との調整
- 報道発表等の広報PR
電話対応の業務効率化に効果を実感、本格導入を検討
京都市文化市民局地域自治推進室:常國、牧
本プロジェクトでは、音声ガイダンスに従い電話機を操作するだけで、必要な情報や適切なお問い合わせ先を御案内する自動音声応答(IVR)電話サービスを試行導入しました。
これにより、休日や夜間など閉庁時間を含む24時間365日のお問い合わせ対応が可能となりました。
スマートフォンの場合は、制度の説明やよくある質問等を掲載したホームページのリンクをショートメッセージ(SMS)で送信することで、分かりやすく豊富な情報提供ができるようになっています。加えて、目的の窓口への自動転送によるスムーズな問い合わせ対応も実現することができました。
また、定型的なよくある質問(手続きに必要な持ち物など)に関する電話対応数減少により、窓口対応や、寄り添った相談が必要な方への対応に注力できるようになったことも複合的な効果です。
これまでの電話対応にかかっていたコスト削減に加えて、市民の方のご負担を軽減することができ、電話対応の業務効率化に大きな効果を感じています。
今後は、全区役所支所の代表電話等に本格導入を検討しており、更なる市民の利便性向上と業務効率化に繋がればと考えています。
電話対応の負担軽減により行政サービス全体を効率化
株式会社グラファー:松本嘉津美さん
当社は、住民接点から行政の内部事務まで、切れ目のない行政サービスを実現する「エンドツーエンド」のDXを行っている企業です。市民や職員に、より適切に利用されるサービスの構築を提供しています。
今回、京都市が掲げる「行政情報取得の利便性向上」と「業務効率化(スマート区役所の推進)」という目標を支援するため、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を念頭にした区役所業務のデジタル化推進へ向けて、連携をさせていただくことになりました。
今回のプロジェクトでは、市民の利便性に加えて職員の方の業務負担軽減にも繋がり、行政サービス全体の効率化が実現できました。
また、京都市と連携したことにより、政令市における代表電話でのIVR導入という新たな取り組みを実現することができました。これまで、特定の部署での運用実績が中心でしたが、代表電話へのIVR導入は、当社のこれまでの枠を超えたものです。
今回の先進的な取り組みにより、全国の自治体における同様のニーズに対応するためのノウハウを新たに蓄積することができ、当社にとっても貴重な機会となりました。
また、京都市の内部関係者のご調整や確認依頼への迅速なご対応、またプロジェクト全般における積極的なご協力など、多方面から多大なサポートをいただき、とても有意義なプロジェクトになったと感じています。
得た知見を深化、京都市内での利用拡大と全国的な展開へ
京都市様のような大規模自治体との連携においては、複数部署との調整や進捗管理、さらにはシナリオ設計など多岐にわたる業務が求められました。本プロジェクトでは、市民窓口企画、代表電話(計3つ)、保険年金課(計5つ)の合計9つのシナリオを同時に作成しました。当社にとって9つのシナリオの同時設計は初めての試みでしたが、これにより大きな学びと成果を得ることができました。
また、今回の利用実績に基づくデータは、京都市の特性や市民ニーズを得るために重要なものであり、今後のシナリオ改善や利便性向上に向けて具体的なご提案も可能になりました。
今後はこれらの成果を基盤として、AIなどの新しい技術をIVRに組み込むことでさらなる効率化を図り、京都市全体での業務効率化を推進し、市民がより利用しやすい仕組みを構築していく予定です。
さらに京都市での展開拡大と並行して本プロジェクトで得られた知見をさらに深化させ、全国各自治体の特性や市民ニーズに合わせたシナリオ設計を行い、より多くの自治体や市民に貢献していくことを目指していきます。
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