Story
ポテンシャルを生かせていない公園
公園は、都市の魅力、活力、憩いを生み出す貴重なオープンスペースです。それぞれの公園の持つポテンシャル、規模や位置するエリアに違いがあるにも係わらず、画一的な管理になっており、効果的に使われていない公園が多数存在します。京都市内においては、大小合わせて900以上ある公園の多くで老朽化が進んでいますが、厳しい財政状況のため、リニューアルすることは容易ではなくなっています。また、利用者の安心・安全への配慮から、ボール遊び禁止、火の使用禁止など「してはいけない」ことが増えてしまっている現状もあります。本来の機能が果たされず、閑散とした公園……見かけたことがあるのではないでしょうか。
公園の在り方を見つめ直す挑戦!「おそとチャレンジ」
このような現状から、京都市では、公園の在り方を見つめ直し、もっと楽しく、もっと多くの人がつながりあえること、それぞれの公園のポテンシャルを引き出すために「できること」は何かを考えてきました。
そこで、令和3年度からスタートしたのが、民間企業等に対して公園の柔軟な利活用を試行的に認め、公・民で継続的に対話を行いながら、それぞれの公園の理想像を探る「公民連携 公園利活用トライアル事業(実施報告書)」、通称「おそとチャレンジ」です。
令和3年度の「おそとチャレンジ」では、宝が池公園、新京極公園、竹間公園でキッチンカーによる飲食物の販売、BBQや防災キャンプ体験、地域交流イベントなど、民間企業等の柔軟なアイデアを生かし、普段の公園では体験できない魅力的な企画を多数実施しました。来園者に対して実施したアンケートでは、満足度、継続希望ともに8割以上あり、公園の印象が普段に比べて良くなったとの意見が大多数を占めるなど、多くの賛同が得られました。
「もしも、公園で○○できたら!」始まった未来志向の対話
「おそとチャレンジ」に参画する民間企業等には、単なる営利活動だけでなく、公益に資する取組としての清掃活動や地域団体等との連携に取り組むことを求めています。中には、民間企業と自治連合会などの地域団体が連携し、単なる賑わいの創出ではなく、地域コミュニティの活性化など、地域課題の解決を図るために取り組んだ事例もあります。また、市民活動団体や大学、芸術家といった多様な主体が、活動の輪に加わっています。多くの方が、誰かとつながる場所として、あるいは自分の大事にしていることを表現する場所として、公園を利用する側でなく、楽しみを提供する側に立つことの有用性に気付き始めているのです。
柔軟な公園運営の仕組みづくりへ
あくまで、期間限定の社会実験として実施している「おそとチャレンジ」。そのため、それぞれの公園で、「一過性の取組では意味がない。持続可能な形を考えるべき」という声が挙がっています。そこで京都市は、それぞれの公園の特性や課題を踏まえたうえで理想像を描き、その実現に向けて多様な主体と連携して公園を柔軟に運営する仕組みを構築したいと考えています。
しかし、そのような活動を継続的に実施していくには、運営のための人材や活動資金の確保が課題となってきます。また、屋外での活動は、天候や季節に大きく左右されてしまうこと、公園によっては、日常的に集い、交流できる拠点となる施設が不足していることも課題です。
これらの課題に正面から向き合い、持続可能な公園運営の仕組みを作ること、これが今回のオープンラボの命題です。
公園を、みんなの「サードプレイス」に
歴史都市、大学のまち、国際交流都市、ものづくり都市…様々な顔がある京都市。新たなイノベーションを生み出すポテンシャルを持っています。地域住民、市民活動団体、民間企業、大学などが公園に集い、理想像を共有し、柔軟に使いこなせれば、そういった京都のポテンシャルを引き出し、イノベーションを起こせると信じています。
もちろん、今までどおりの公園もあっていい。一方で、まちづくりの拠点として柔軟に運営し、地域の課題解決や価値の向上につなげていく。地域が望めば、そんな公園をつくりたいと考えます。そして、公園が、自宅でも職場(学校)でもない第3の自分の居場所「サードプレイス」と感じられる場になれば、公園からまちに愛着を持ち、住み続けたい人を増やしていけるはず。京都市が考える公園利活用の目的は、ここにあります。
そのためには、既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想で公園の未来像を描く必要があります。今回募集するパートナーには、京都市や地域の方と一緒にそのような未来像を描きながら、公園運営を持続可能なものとするための制度設計、実証に御協力いただきたいと考えています。