Story
新しくなった美術館
1933年に開館した京都市美術館は、公立美術館として日本で現存する最古の建築です。2018年から2019年にかけて行われた大規模改修では、歴史的な景観を残しながら現代的なデザインを加えることにより、機能を飛躍的に向上させています。改修に伴って導入されたネーミングライツ制度により、2020年5月、伝統と革新が交わる京都にふさわしい美術館「京都市京セラ美術館」としてリニューアルオープンしました。
今回の改修により、美術館西側に位置する京セラスクエアにはなだらかなスロープ状の広場が設けられ、さまざまな文化施設の集まる岡崎公園に新しい景観として溶け込んでいます。この広場から館内に入ると、広く明るい空間がが見えてきます。リニューアル前には大型の彫刻を飾っていた大陳列室だった場所。ここは中央ホールとなり、館内のあらゆるスペースと繋がるようになりました。また、さまざまにアクセスできるよう設けられた複数の出入口も、新旧の建築が交差した空間を自由に楽しむことに一役買っています。
景観への配慮
岡崎地区は京都市の中でも景観への配慮が強く求められる地域です。リニューアル前にあったような、建物正面の大きな垂れ幕、横断幕等は控えられるようになりました。また、メインエントランスが大きく変わったことで、昔からの利用者の中には慣れない方も多く、館内で迷われる方も散見されます。
館内案内の難しさ
京都市京セラ美術館には、本館の南・北回廊の1階と2階の展示室、リニューアルで新設された東山キューブがあり、ほかにもエリアが複数存在します。これらの展示エリアではそれぞれの展示を行っており、常時複数の展覧会や催しを開催しています。またリニューアル後はMICE※利用や結婚式、各種撮影など一般への貸し出しも行われるようになり、美術館の利用方法は多岐にわたっています。
- ※ MICE(マイス)
- Meeting(会議)、Incentive(研修)、ConventionまたはConference(会議)、EventまたはExhibition(催し、展示会)の頭字語をとった言葉。ビジネスイベントの総称。
このように多くの展示を同時開催するため、館内の案内が大変複雑になります。展示内容や催しはすべて一時的なものであり、定常的なサイン設置では対応ができません。また、置き型サインや館内地図の掲示など従来型の案内は、あまり増えると美術館の景観を損なうことになりかねません。今回のオープンラボでは、多様な展示を行う館内で、美術館の景観を損なうことなく、利用者が迷わないようにする直感的なソリューションを求めます。
美術館の体験をよりよくするために
新しく生まれ変わった京都市京セラ美術館は、だれでも立ち入ることができる場所です。京セラスクエアから、気軽に美術館の独特の空間に入ってくることができます。今回の実証実験では、館内の利便性はもちろんのこと、岡崎地域の一部としての美術館をよりよくしたい、という私たちの理想を共有いただける方からのご提案に期待をします。