Story
増えている「管理されていない森林」
戦後や高度成長期に、山々にスギやヒノキなどの植林が行われました。スギやヒノキが木材として利用できるようになるまで、50年以上の年月を必要とします。
戦後や高度成長期に植林された木は、最近になってようやく木材として利用できる状態まで育ってきましたが、この間に外国産の木材が広く流通し、国産材の需要や価格が低下し、日本の林業は衰退してしまいました。国産材が競争力を失ったことで、所有者が森林から離れていきました。こうして、管理されていない森林が増えてしまいました。
場所と所有者がわかりづらい森林
森林にも地番が存在し、所在地がありますが、街中の区画とは異なり、判然とした境界がないことが多くあります。森林で仕事をしてきたプロであっても、どこが境界なのかわからないものです。
また、国産材の価格が低下し、所有者の森林への関心が薄くなったことにより、相続時の登記が適切に行われないという事態もめずらしくありません。
どこからどこまでが境界で誰が所有している森林かわからず、適切に管理されていない森林が、数多く存在しているのです。
森林経営管理法と京都市のしごと
こういった状況の改善のため、平成30年に森林経営管理法が制定され、森林の所有者は適切に管理することが義務付けられ、所有者がどうしても管理できない場合は市町村に一定期間管理を預ける制度ができました。市町村が管理を預かった場合、木材を生産し、利益を産み出すことができそうな、林業経営に適した森林は、林業経営者などの担い手に経営を委ねます。また、利益を産みだすことが難しい森林については、市町村が直接管理することがこの制度で定められています。
京都市ではこの制度を運用していくため、管理されていない森林を調査しています。森林の状況は、測量や撮影など行い確認します。現状では、この調査のために多くの機材を森林に持ち込む必要があり、時間もかかります。今回の実証実験では、この調査業務を、AIやIoTといった先端技術を用いて、合理化することを目指します。持ち運びしやすく、耐候性にすぐれた機材で、できるだけ多くの人がGPSによる位置確認などの機能にアクセスできることを求めています。
森林は個人の資産であると同時に公共の資産
森林は木材を供給してくれるだけでなく、CO₂を固定することで地球の温暖化を防止し、山に根を張ることで豊かな水源となり、土壌の流出を防いでいます。
間伐などが行われずに管理されていない森林では、木が密集し、森林内が暗くなり、地表を健全に保つ植物が育ちません。細長い木が多く、風や雪で倒れやすくなります。また、土壌が雨で流れやすく、土砂崩れなどの災害が起きやすくなってしまいます。
森林の多くは個人の資産ですが、森林の管理を怠ると、森林の持つ公益的な機能も損なわれてしまいます。森林を守り、育てることの重要性を理解してくださる企業のご参加を期待します。