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地下鉄の電照広告の空き枠を解消したい
「地下鉄の広告に空き枠がある」と聞いたら、みなさんはどんな事情を思い描くでしょうか。「コロナ禍で企業の業績が落ち込んで、広告を出す余裕がないのかな」、「世間に自粛ムードがあると広告も控えられるのかしら」といったことを想起なさる方もいるかもしれません。あるいは別の観点から、「交通局の経営にも影響があるのかな?」ということを連想する方もいるかもしれません。しかし、今回テーマとしている「電照広告」については、意外な理由がありました。
コロナ禍の影響で地下鉄の利用者数が減っていること、また、景気動向の影響を受けて、広告が減少していることも間違いありません。しかし、こと広告収入に関しては、地下鉄利用者数の減少率ほど、落ち込んではおりません。
では、いま「電照広告の空き枠を解消したい」というのは、なぜなのでしょうか。
東日本大震災と電照広告
ひとくちに「広告」といっても、地下鉄には多様な種類の広告があります。地下鉄車内の吊り広告や、窓の上の壁面の広告。改札周辺に見られる柱のデジタルサイネージもあります。さまざまな広告がありますが、今回の主役は地下鉄駅構内の壁面にある電照広告です。駅構内の各所にあって、本来は、電車待ちの人にも、歩く人にとっても目に止まりやすい広告ですが、空き枠がある状況が続いています。
2011年の東日本大震災のあと、日本全国で、電力の使用について見直されるようになりました。京都市営地下鉄では、駅構内の電灯の間引きと共に、使用していない電照広告についても、灯りを灯さないことになりました。灯りのない空き広告は広告主への訴求力も弱くなり、更に広告枠が埋まらなくなる、という悪循環が起こってしまいました。
社会的な役割を担う「地下鉄の景色」
電照広告に空き枠があると、駅構内はどうしても殺風景になってしまいます。通勤、通学、また観光客にとっても、さみしい雰囲気の中の移動となってしまいます。
京都市交通局では、これまでから空き枠対策として観光PRや、地下鉄利用促進PRはもとより、市政PRへの活用などの取組を進めてきました。それは、多くの市民の方に御利用いただく地下鉄の駅構内を公共的な情報発信の場として活用するという交通局ならではの使命があると考えるからです。しかしコロナ禍の影響で地下鉄の利用者数が減じ、財政状況が厳しくなる状況のもと、空き枠解消がいよいよ難しくなってきました。
コロナ禍だからこそ、通勤、通学等で地下鉄を利用するみなさんに、元気をお届けしたいという思いが、私たち交通局にはあります。今回の実証実験では、この思いを理解していただける、企業、団体のみなさんからの、空き枠を活用する提案をお待ちしております。
烏丸線40周年と、コロナ禍で見えてきた地下鉄電照広告の可能性
今回、広く電照広告の空き枠解消のご提案を募集する背景のひとつに、地下鉄烏丸線の40周年があります。今年、令和3年は、昭和56年に北大路駅から京都駅間を結ぶ地下鉄が開業した40年目の節目にあたります。本来であれば、節目の年を市民の方とともにお祝いしたいと考えていましたが、取組を実施できませんでした。
しかし、コロナ禍のさなかにあって、新しい生活スタイルのもと、地下鉄の利用が減じていくという厳しい状況であるからこそ、見えてきたこともあります。それは、地下鉄がいかに多くの方に親しみをもって、御利用いただいていたのかということです。今回の、このオープンラボでも、コロナ禍という状況であるからこそ、みなさんの「気づき」のなかから多く知見をいただけるものと期待をしています。