令和3年度に事業が始まり、5年目を迎えた京都市の公民連携プラットフォーム「KYOTO CITY OPEN LABO」(以下、LABO)。
今年度から、業務委託先の株式会社よい根が、京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)とも連携して新しい広がりをつくろうとしています。

今回は、京都市の担当者2名と、よい根・SILKの4名で、LABOの現状と今後の展望を語り合う場を開きました。

※開催日:令和7年8月29日(金)

座談会メンバー

○京都市総合企画局国際都市共創推進室
大野 達三
山村 周

○株式会社よい根
前田 展広 さん(代表取締役)

○京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)
木村 響子 さん(京都市 まちづくり協働コーディネーター)
中村 友美 さん(株式会社taliki インキュベーションマネージャー)
橋本 勇人 さん(橋本経営相談事務所 代表)打合せの様子。クリックで拡大表示。

公民連携による財政負担の大幅な削減に寄与

【前田】この4年で提案が340件、そのうち連携が成立したのが110件というのは、なかなかインパクトのある数字ですよね。通常の業務委託と比べて、支出を1/9程度に抑えられているというのも大切な成果だと思います!これまでのLABOの活動を、京都市のお二人はどう感じていますか?

【山村】様々な方のご協力によって実現した成果です。プロジェクト総経費のうち、大部分が企業さんの資金でまかなわれていますので、非常にありがたいです。

【大野】僕はLABOが立ち上がった時は別の部署にいて、実は第1回の説明会に参加したんです。当時は正直なところ、この実証実験によって地域の何がどう良くなるのか、が分かりにくいと感じていました。最初は行政の視点から事業を組み立てるしかなくて、テーマ設定や企業との連携のしかたも手探りだったんだと思います。

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【山村】私は逆に、去年この部署に来るまで「公民連携」という言葉を聞いたこともありませんでした。異動が決まった時はおもしろそうだなと思ったのですが、1年目は想像していたよりも事務作業が多くて。「もっと各プロジェクトの中に入って、一緒にやりたい!」と、もどかしかったですね。今年から皆さんが参画してくれて、いい動き方ができるようになってきたと思います。

【前田】僕としては今後、規模の大きな企業はもちろん、地域企業やスタートアップとの取組ももっと増やしていけたら、という思いがあります。

【大野】そうですね。これまで企業向けの説明会は、大阪など企業が集まる他都市の拠点に出かけていって、そこの関係者を呼んでもらうことが多かったんです。もちろん出会いの数は増えるんですけど、実験をした後に残るものが、地域にどう活かされるのか、地域の企業等とも連携しながら進めると、もっと見えてくる部分があるのではないかと思っています。

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商品・サービスの価値を実証するフィールドを得られる

【山村】このタイミングで、地域企業とのつながりが強いよい根さん・SILKさんが仲間に加わってくださったことは、ありがたいですね。

【前田】僕は3年間、SILKで京都市職員向けの相談会を開催してきました。約60部署のお悩みをお聞きして、すごく面白かったんですよ。色んな担当者さんがそれぞれに思いを持っていることがわかって、企業とおつなぎすることで新しい動きが生まれるのを一緒に見させてもらって。今回LABOの運営のお話をいただいたので、京都市ではどの部署でも公民連携を当たり前にやっている、というところまで活動を広げていきたいですね。

【中村】SILKとしては、今年はソーシャルイノベーションの裾野を広げるために、積極的に京都の外にも出ていこうとしています。東京や大阪でのイベントを始めたり、個社支援からコミュニティでの支援へと動き方を変えていったり。

【前田】新たに今年から公民連携にも関わるようになって、どうですか?

【中村】めっちゃ楽しいです。社会起業家にも、大手の事業会社さんにも、自治体がカバーしきれない課題を解決したいと思ってくれる人たちがいるんですよね。彼らにはお金と実証するためのフィールドの2つが必要だと考えた時に、京都市が持っている資産を活用することで、お互いがハッピーになれる。市との取組で成果を出せれば、企業の実績としてはすごく価値があります。なので、どんどん課題を出してください!

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民間との連携や新しい動きに前向きな市職員が増えた

【大野】市役所内の横のつながりをつくる後押しもしていただいて、職場の中でも連携が活発になってきた実感があります。以前から部署間のつながりが弱いところは気になっていたので、嬉しい変化です。

【木村】先日開催した市職員向けの研修の場では、公民連携の事業を経験してきた手練れの先輩職員たちが参加してくださって。モヤモヤしている若手の方々に、色々な視点からアドバイスをしていました。直属の上司じゃなく、違う部署にロールモデルがいるっていいですよね。

【前田】いい機会になりましたね。もっと気軽に集まれる場を増やしていこうと、今月から、市職員が自由に出入りして雑談や相談をできる時間を作りました。企業さんにも参加してもらえるよう、徐々に場を開いていけたらと思っています。肩の力を抜いて、気軽に意見交換できる機会を増やしていきたい。

【橋本】新しい試みなので、どうなっていくか楽しみです。

【前田】企業側からも、色んな声が聞こえてきています。京都を良くしたいという思いの強さを感じて、僕はけっこう心を動かされる場面が多くて。一方で印象的だったのは、誰もが名前を知っているような大企業からフリー型のご提案があって、それを京都市側がしっかり受け止めて対応してくれたことでした。

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【中村】3部署から担当の方が集まって、フラットに“壁打ち”をする打合せを設定してくださって。他都市では話すら聞いてもらえないこともあったそうで、「3部署も集まってくれるなんて!」と企業の方々がすごく喜んでいました。

【大野】ある課長さんが、すぐに各部署に声をかけてくれたんですよ。まさに横のつながりが活きましたね。

【前田】この4〜5年で、行政の方のマインドが変わってきたというか、民間との連携や新しい動きに前向きな人が増えた印象を持っています。コミュニティを作るようなアプローチも増えてきて、市役所が開かれてきているなぁと。

【中村】京都には、もともとソーシャルな空気が流れていますよね。意識してやっているんじゃなくて、歴史の文脈から自然とそうなっているというか。社会起業家がやりたいことと、行政が求めていることがフィットしやすいまちだと思うので、ぜひ立ち寄ってみてください。

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行政課題をきっかけに、新たなサービスが創出される

【前田】LABOについて、これまでの5年間を振り返って、次につなげていきたいことはありますか?

【大野】まだまだLABOで扱っている課題の深さにはばらつきがあって、単純に今これができてないからどうにかしたい、という表層的な課題も出してしまっているのが現状です。本当の課題とは何なのか、担当部署と一緒に課題を掘り下げていきながら、地域の方にも担当部署にも効果を実感してもらえるマッチングを、今後は増やしていきたいですね。

【前田】粒度がバラバラな課題が入り混じっているんですね。

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【大野】今はまだ市の職員にとっても企業の方々にとっても「公民連携」が当たり前の選択肢にはなっていなくて、属人的なコーディネートに頼らざるを得ません。もっとわかりやすい軸を示して、色んな人が自然とつなぎ役になれる土壌を作れたらと思います。

【橋本】京都の企業は、地域に貢献したいという思いを強く持っておられるので、お声がけするとフットワーク軽く動いてくださることが多いです。関わり方は色々あるので、まずは何か交流できる機会に足を運んでいただけたら嬉しいですね。さっき課題の深さという話がありましたけど、実際に、単発のイベントから大きな構想まで、かなり幅があると思います。

【木村】LABOのwebサイトだけを見ると、けっこうハードルが高く感じると思うんですけど、気軽に関わってほしいですね。LABOの運営に関わるようになって、まず自分がもっと色んな企業さんと出会いたいなと改めて思いました。京都の中も、外も。京都市の課題に関心を持ってくださる全国の企業さんとの出会いを、楽しみにしています!

【前田】企業が持っている商品やサービスが、実は行政の課題や社会の課題にうまくハマる場合があって。そういう時って、新しいマーケットと出会えた感覚があるんです。利益とか効率性だけじゃない社会の側面にフォーカスして、その企業ならではの価値を発揮する。そんな場面が京都に増えていくといいな、と期待しています。

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