デジタル技術を活用した「宿泊施設のバリアフリー情報」の見える化
- 募集課題
- デジタル技術を活用した「宿泊施設のバリアフリー情報」の見える化
- 担当課
- 京都市都市計画局建築指導部建築審査課
- 採用企業等
- 阿部建設株式会社

京都市都市計画局建築指導部建築審査課では、高齢者や障害者等の方が、安心して宿泊するために必要となるバリアフリー情報を正確に把握でき、自分のニーズに応じてスムーズに宿泊施設を選択できる環境整備を行っています。
本市では京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例に基づき宿泊施設から届出を受けたバリアフリー情報を取りまとめて、「人にやさしいお宿情報」としてホームページに公表しています。しかしながら、情報発信がテキストや写真に留まっており、高齢者や障害者の方が視覚的に分かりやすく情報を受け取れる状況には至っていませんでした。
そこで京都市では、高齢者や障害者等の方が安心して宿泊するために必要となるバリアフリー情報を正確に把握でき、自分のニーズに応じてスムーズに宿泊施設を選択できる環境の整備を目指し、民間企業の技術やアイデアを募集したところ、阿部建設株式会社(所在地:愛知県名古屋市北区、代表取締役:阿部一雄)から下記のような解決策の提案があり、京都市として採用することを決定し、共にプロジェクトに取り組みました。
プロジェクトの概要
目的 | 高齢者や障害者等の方が安心して宿泊できるよう、必要となるバリアフリー情報を正確に把握でき、自分のニーズに応じてスムーズに宿泊施設を選択できる環境の整備。 |
課題 | 宿泊施設のバリアフリー情報を取りまとめてホームページ上に公表しているが、情報発信がテキストや写真に留まっており、高齢者や障害者の方が視覚的に分かりやすく情報を受け取れる状況には至っていない。 |
解決策 | 阿部建設株式会社が提供する宿泊施設のバリアフリー対応の現状を写真や3D画像を用いて詳細に発信するポータルサイト「IKKEL(イッケル)」を活用し、施設のバリアフリー情報を分かりやすく発信するコンテンツづくり。 |
成果 | ・宿泊施設のバリアフリー情報について、施設や客室の詳細な写真や3D画像を用いて分かりやすく発信できるようになった。
・段差や通路の幅、トイレや浴室のサイズの確認(計測)や、施設が提供する補助器具やサービスをチェックできるようになり、快適に宿泊できる施設かどうかを利用者自身が判断できるようになった。 |
プロジェクトのタイムライン
企業が提供した技術やアイデア
バリアフリー情報を公開するポータルサイト「IKKEL(イッケル)」を通して、写真や動画では提示しきれない空間情報を発信する。バリアフリーに精通した建築士の「バリアフリーコーディネーター」が現地を訪問して撮影・調査を行うため、施設責任者と直接対話し、バリアフリーの現状や、改修についての相談やアドバイスが可能となった。
- 3DVRの最新技術及び建物や空間を高精度にスキャンするMatterPortを⽤いて施設の情報を掲載
- バリアフリーコーディネーターが現地の撮影と調査を実施(調査時間約5~2時間)
- 施設で受けられるバリアフリー視点でのサービスの掲載

京都市が提供したサポート
- 宿泊施設のバリアフリーに関するホームページ「人にやさしいお宿情報」の公表施設のうち、「IKKEL(イッケル)」に掲載を希望される宿泊施設を紹介
3D画像でバリアフリー情報を「見える化」し、宿泊施設選びの利便性を向上
京都市都市計画局建築指導部建築審査課(バリアフリー推進担当): 立石
阿部建設株式会社との連携により、宿泊施設のバリアフリー対応の現状を写真や3D画像を活用して詳細に発信する民間ポータルサイト「IKKEL(イッケル)」を導入し、「人にやさしいお宿情報」の充実を図りました。
今回、100件以上ある「人にやさしいお宿情報」掲載施設のうち1件を、初めて「IKKEL」に掲載しました。3D画像を活用することで、文字や写真の情報のみでは伝えきれなかった施設や客室のバリアフリー設備を、利用者が視覚的に理解できる仕組みを構築できました。
例えば、段差の有無や通路の幅、トイレや浴室のサイズなど、車椅子での宿泊において気になる情報を利用者や介助者が事前にチェック(画面上で知りたい箇所の寸法を計測)できるため、より安心して施設をお選びいただけるようになります。 また、補助具の貸し出し状況やサポートサービスの内容も提供しているため、宿泊前の不安軽減につながると感じています。
今回の実証実験で得られたデータをもとに、バリアフリー情報の充実と、市内の宿泊施設をはじめさまざまな施設での展開を目指し、課題の分析や改善策を検討していきます。
今後も、公民連携により宿泊施設のバリアフリー情報の「見える化」を推進し、IKKELへの掲載を希望される宿泊施設を広く募集してまいります。
詳細なバリアフリー情報の提供により、障害者や高齢者の外出機会の拡大と生活の質向上を支援
阿部建設株式会社 代表取締役:阿部一雄さん
当社が手掛けるバリアフリー住宅関連事業の一環として、一般社団法人バリアフリー総合研究所 ”UD-ラボ 東海”では、高齢者や障害者が安全かつ快適に居住できる環境整備を推進中です。具体的には、建築士を中心とした専門チームがバリアフリー建築の設計・施工を手掛け、誰もが利用しやすい環境の創出を支援しています。
障害の状態や必要なサポートは個々に異なります。そのため、利用者自身が宿泊施設の情報を確認し適切な判断を行えるよう、バリアフリー情報の提供は不可欠です。こうした背景のもと、当社は京都市に提案を行い、連携に至りました。これにより、障害者や高齢者の外出機会の拡大と生活の質向上に貢献することを目指しています。
「IKKEL」は、バリアフリー対応の宿泊施設情報を発信するポータルサイトです。従来の写真や文字情報では伝えきれなかった施設の空間構造を、3DVR技術を活用してリアルに可視化し、利用者が宿泊前に施設環境を正確に把握できるよう支援します。
3D画像を活用することで、施設内を360度の視点で確認でき、実際にその場を歩いているかのように室内の様子を把握できます。これによりバリアフリー設備を視覚的に確認でき、施設選定の際の不安軽減につながります。また、施設が提供する補助具や介護食の有無など、サポートサービスの詳細も把握できるため、より的確な宿泊先選びが可能になります。
今後もバリアフリー環境の整備を通じて、すべての人が安心して外出できる社会の実現に貢献してまいります。
日本有数の観光都市と連携、全国の観光都市への波及を期待
阿部建設株式会社 広報部部長:落合 桂さん
今回の実証を通じて、京都市をはじめ、全国の宿泊施設のバリアフリー情報発信に向けたビジネスモデルを構築できました。
日本有数の観光都市である京都市における宿泊施設の情報掲載を促進することで、その他の観光都市への波及を期待しています。また、「IKKEL」と京都市のサイト「人にやさしいお宿情報」との相互リンクにより、より多くの方にバリアフリー情報をお届けすることが可能になったと感じています。
今回の実証により、京都で建築物のバリアフリー推進に取り組む団体や宿泊施設事業者とのネットワークを構築できたことも大きなメリットです。さらに、京都市との連携実績が本プロジェクトの信用性向上にも寄与しています。
今後は、全国で統一されたバリアフリー情報を提供することで、誰もが使いやすいポータルサイトの実現を目指します。他の都市にも積極的に協力を呼びかけ、全国的なバリアフリー情報の整備を推進中です。この取り組みを加速させ、多くの方にとって分かりやすいバリアフリー情報を届けられるよう、「IKKEL」の普及をさらに進めていきたいです。
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