Story
ワンルームの空き室問題
日本では全国的に空き家が増え続けています。国土交通省による平成30年の住宅・土地統計調査では、全国の住宅の13.6%が空き家であるということがわかっています。管理の不十分な空き家を放置していると、倒壊や崩壊、ごみの不法投棄、景観等の面で、近隣住民の生活環境に影響を及ぼしかねません。
東山区も同様の問題を抱えています。「京都を代表する観光地」のイメージもある東山区は、一戸建てやファミリーマンションにおいては、不動産価格が高く、手が届きづらい傾向があるようです。しかし、比較的安価な、共同住宅──いわゆるワンルームマンションにおいても、空き室を抱えているところが多く存在しています。
オーナーの実情と傾向
東山区のすべてのワンルームマンションが「空き室だらけ」ということはありません。新築で、新しい設備の整ったワンルームマンションは人気があり、空き室はすぐに埋まっていきます。空き室のあるワンルームマンションの多くは、築年数が40年を超えるような物件です。
築年数の古い物件のオーナーは、高齢であることも多く、物件についての投資回収が終わっていることも珍しくありません。そのため、こういった物件のオーナーは、リノベーションを行って再び入居者を募ることについても、更地にして新たな資産運用をすることについても、労力を要するため、あまり前向きではない傾向があるようです。かといって、入居者募集の工夫として「家賃を下げる」といった手法を選ぶオーナーが増えてしまうと、設備投資の資金を確保することも難しくなり、古い物件が残り続けてしまうという循環から抜け出せなくなってしまいます。
なかには、行政とのやりとりの中で、東山区の抱える人口についての問題意識に興味を持ってくださるオーナーもいます。そういったオーナーは、コレクティブハウス※化の検討であるとか、さまざまな付加価値の付与について、前向きに付き合ってくださることもあります。
隠れたポテンシャル
東山区がこの課題を公開する動機は、単なる「空き家問題」を解決したいということではありません。
人口減少率が京都市の中で一番高い一方で、「文化的に魅力のある東山区に住みたい人」に対して現状、手の届きづらい住宅ばかりになっている現状をこのワンルームマンションが受け皿になるポテンシャルを秘めているのではないか?と考えるからです。
まずはワンルームマンションと向き合う
空き家問題は、全国的に起こっている問題であり、どこの自治体も、まだ手堅い対策のない中、解決を模索しています。東山区の空き家問題も、ワンルームマンションに特有ではありません。しかし、問題の切り分けを行うことによって、切り崩し方が見えてくることもあります。
人口減少は、これから確実に私たちの生活に関わってくる、解決しなければならない問題です。今回の課題の中心部分にいるオーナーの皆さんにとっては、現在の状況と即座に結びつくものではないだけに、空室の積極的な解消に向き合う動機が生まれ難いのはやむを得ないところです。それでも、私たちはこの問題に、なにかしらの選択肢がある状態を作っておきたいと考えています。
今回のオープンラボでは、ワンルームマンションの空き室問題について、オーナーの動機が生まれるような広範なソリューション、あるいはアイデアをお待ちしております。
- ※コレクティブハウス
- 北欧由来の共同生活。血縁を問わず人が集まり、それぞれの個室に加えて、共同の食堂、育児室等を持ち、共同生活を行う。